2023/06/22 14:22
60歳定年の会社だった。
50歳を過ぎたころから、いつもぼんやりと考えていた。
定年後、一体何をやれば良いのだろう。
結構長生きの家系だから(曾祖父102歳没、祖父96歳没、父88歳健在)、多分自分も少なくとも80歳以上は生きるだろう。
健康寿命は75歳といったところだろうか。
定年後、15年は働けるということだ。
生まれたての赤ん坊が15歳の中学校三年生になるまで、社会人3年目の25歳がベテランの40歳になるまで、働き盛りの45歳が定年の60歳になるまでと同じ年月と考えると、振り返るとあっという間だったが、これから迎えるとなるとやはり長い年月だ。 働かず、のんびりと趣味に生きる?
そもそもそんな趣味も無い。賄える財産も無い。
今まで過ごしてきたアパレル業界に再就職?
この年齢では有り得ない。
畑違いの仕事で再就職?
マンションの管理人? ガードマン? 運転手?
そこで働く自分を想像出来ない。
起業する?
一体そんなこと出来るのか?
結論の出ない堂々巡りだったが、2020年2月、57歳の時に米国人社長から突然の戦力外通告。
真っ先に責任を問われるMDというポジション。
外資である以上、この様なことはいつ起きてもおかしくないと常に頭の片隅に有った。
だから全く動揺は無かった。
2週間後に退職したら、安倍さんが学校の休校要請。
コロナ禍が始まった。
再就職の道は塞がった。
起業しようと腹を括った。
大学卒業後、大好きで飛び込んだアパレルの世界でこれからも生きて行こうと心に決めた。
恐る恐る妻に話してみた。
いいんじゃない。今までの集大成だね。
拍子抜けした。
でも、おかげですぐに事業プランを考え始めることが出来た。
考えるにあたり、二つの方針を決めた。
1.ひとりで運営出来ること
布帛を扱うと生地を仕入れたり、パターンを外注したり、附属が多かったり、ビジネスモデルが複雑になってしまう。
一本の糸を決めれば、ひとりで編地を考え、デザインを考え、工場さんとやり取りすればモノづくりが可能なニット(編物)製品を扱うことに決めた。
製品仕入れだから、コスト管理も容易だ。
リアル店舗で販売するには、販売員の雇用も含め、莫大な経費がかかる。
卸は毎シーズンの展示会が必要になり、売上の回収も大変だ。
ひとりで切り盛りできるECサイトで製品を販売することに決めた。
2. 自分に近い顧客をターゲットにすること
顧客の気持ちがわかることは、企業活動では明らかに重要なこと。
だったら自分に近いミドル世代男性をターゲットにしようと考えた。
例えば、30代女性の気持ちを想像するよりも、ずっと簡単だ。
その上で、自分も大好きなジャケットアイテムを販売しようと考えた。
働き盛りのミドル世代の多くには、平日は勿論、休日にも必要なアイテムだ。
反物のニット地を裁断、縫製した安物のニットジャケットは多々存在するが、大人の男が満足のいく上質で、ビジネスにも休日スタイルにも通用する、汎用性の高いニット(編物)ジャケットはマーケットでもあまり見かけない。
有ったとしても完成度の低い、イマイチなものが多いということは、今まで僕が実感してきたことだ。
だったら自分で作ってやろうと考えた。
こうして僕の事業コンセプトが決まった。
ミドル世代男性へのニットジャケットD2C
一年後の2021年春に創業することを目標に走り出した。
フェイバニッツ 代表 市勢 善浩